緊急事態に遭遇したときに適切な応急手当ができるように、日頃から応急手当を学び、身につけておきましょう。
応急手当の基礎知識
私たちはいつどこで突然のけがや病気に襲われるか分かりません。
急に意識を失ったり、けがで大出血したり、のどに食べ物が詰まったり・・・。
けがや病気の中で最も緊急を要するものは、心臓や呼吸が止まってしまった場合です。急性心筋梗塞や脳卒中などは、何の前触れもなく起こることがあり、心臓と呼吸が突然止まってしまうこともあります。
このような人の命を救うために、そばに居合わせた人が早期に応急手当(救命処置)を行うことで、「命が助かる可能性」が高くなります。
救命の可能性と時間経過
心臓や呼吸が止まった人の命が助かる可能性は、時間とともに低下しますが、救急車が到着するまでの間、そばに居合わせた人が応急手当を行うことにより、救命の可能性が高くなります。
救急車が到着するまでには全国平均で約8分かかります。救急車が来るまでに手をこまねいていては、助かる命も助けられないことになります。
そばに居合わせた皆さんが救命処置を行えるよう、心肺蘇生法やAEDの使用法を身に付けておくことが大切です。
新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた心肺蘇生について
基本的な考え方について
- 胸骨圧迫のみの場合を含め心肺蘇生はエアロゾル(ウイルスなどを含む微粒子が浮遊した空気)を発生させる可能性があるため、新型コロナウイルス感染症が流行している状況においては、全ての心停止傷病者に感染の疑いがあるものとして対応してください。
- 成人の心停止に対しては、人工呼吸は行わずに胸骨圧迫とAEDによる電気ショックを実施してください。
- 子どもの心停止に対しては、講習を受けて人工呼吸の技術を身につけていて、人工呼吸を行う意思がある場合には、人工呼吸も実施してください。 ※子どもの心停止は、窒息や溺水など呼吸障害を原因とすることが多く、人工呼吸の必要性が比較的高いためです。
心肺蘇生の具体的手順について
- 反応を確認する。確認の際に、傷病者の顔と救助者の顔が近づきすぎないようにしてください。
- 反応がなかったら、助けを求め119番通報とAED搬送を依頼する。
- 呼吸を確認する。確認の際に、傷病者の顔と救助者の顔が近づきすぎないようにしてください。
- 普段通りの呼吸がなかったら、胸骨圧迫を30回行う。エアロゾルの飛散を防ぐため、胸骨圧迫を開始する前に、ハンカチやタオルなどがあれば傷病者の鼻と口にそれを被せるようにしてください。また、マスクや衣服でも代用できます。
- 胸骨圧迫30回と人工呼吸2回の組み合わせ ・成人に対しては、救助者が講習を受けて人工呼吸の技術を身につけていて、人工呼吸を行う意思がある場合でも、人工呼吸は実施せずに胸骨圧迫だけを続けるようにしてください。 ・子どもに対しては、講習を受けて人工呼吸の技術を身につけていて、人工呼吸を行う意思がある場合には、胸骨圧迫に人工呼吸を組み合わせる。その際、手元に人工呼吸用の感染防護具があれば使用してください。感染の危険などを考えて人工呼吸を行うことにためらいがある場合には、胸骨圧迫だけを続けてください。
- 心肺蘇生の実施後 救急隊の到着後に、傷病者を救急隊員に引き継いだあとは、速やかに石鹸と流水で手と顔を十分に洗ってください。傷病者の鼻と口にかぶせたハンカチやタオルなどは、直接触れないようにして廃棄することが望ましいとされています。
※反応の確認、呼吸の確認、胸骨圧迫や人工呼吸などの実施方法については、下記の心肺蘇生の手順<<AEDの使用法>>をご覧ください。
心肺蘇生の手順 ≪AEDの使用法≫
1肩をたたきながら声をかけ反応(意識)を見る

2反応がなかったら、大声で助けを求め、119番通報とAED搬送を依頼

救助者が一人の場合や、協力者が誰もいない場合には、まず自分で119番通報をしてください。
すぐ近くにAEDがあることが分かっている場合にはAEDを取りに行ってください。
3呼吸を確認する

次のいずれかの場合には、「普段通りの呼吸なし」と判断します。
- 胸や腹部の動きがない場合
- 10秒間確認しても、呼吸の状態がよくわからない場合
- しゃくりあげるような、途切れ途切れに起きる呼吸がみられる場合
4普段通りの呼吸がなかったら、すぐに胸骨圧迫を30回行う

傷病者に「普段通りの呼吸」がないと判断したら、ただちに胸骨圧迫を開始します。胸の真ん中を、重ねた両手で「強く、速く、絶え間なく」圧迫します。
- 胸の真ん中に片方の手の付け根を置きます
- もう片方の手をその手の上に重ねます。両手の指をお互いに組むと、圧迫する点により力が集中します
- 肘をまっすぐに伸ばして手の付け根の部分に体重をかけ、傷病者の胸が少なくとも5cm沈むほど強く圧迫します
- 1分間に少なくとも100回の速いテンポで30回連続して絶え間なく圧迫します
- 圧迫と圧迫の間(圧迫を緩める時)は、胸がしっかり戻るまで十分に力を抜きます
- 小児の場合は、両手または片手で、胸の厚さの約1/3が沈むほど強く圧迫します
5胸骨圧迫の後、人工呼吸を2回行う

30回の胸骨圧迫終了後、口対口人工呼吸により息を吹き込みます。
(1)気道確保(頭部後屈あご先拳上法)
- 傷病者の喉の奥を広げて空気を肺に通しやすくします。
- 片手を額に当てて、もう片方の手の人差し指と中指の2本をあご先(骨のある硬い部分)に当てて、頭を後ろに のけぞらせ、あご先を上げます。
(2)人工呼吸
- 気道を確保したまま、額に当てた手の親指と人差し指で倒れている人の鼻をつまみます。
- 口を大きく開けて傷病者の口を覆い、空気が漏れないようにして、息を約1秒かけて吹き込み、傷病者の胸が持ち上がるのを確認します。
- いったん口を離し、同じ要領でもう1回吹き込みます。
(注意)
- 2回の吹き込みで、胸が上がるのが理想ですが、胸が上がらない場合でも、吹き込みは2回までとし、すぐに胸骨圧迫に進みます。
- 人工呼吸をしている間は胸骨圧迫が中断しますが、中断時間はできるだけ短くなるようにしてください。
- 傷病者の顔面や口から出血している場合や、口と口を直接接触させて人工呼吸を行うことがためらわれる場合には、人工呼吸を省略し、胸骨圧迫のみを続けます。
6心肺蘇生(胸骨圧迫と人工呼吸)の継続


胸骨圧迫を30回連続して行った後に、人工呼吸を2回行います。胸骨圧迫と人工呼吸の組み合わせ(30:2のサイクル)を、救急隊に引き継ぐまで絶え間なく続けます。
- 胸骨圧迫を続けるのは疲れるので、もし救助者が2人以上いる場合は、1~2分間程度を目安に、胸骨圧迫の役割を交代しましょう。
- 心肺蘇生を中止するのは次の場合です。
■救急隊に引き継いだとき
■心肺蘇生を続けているうちに傷病者が目を開けたり、「普段どおりの呼吸」をし始めた場合
7回復体位

AEDの使用法
8AEDが到着したら・・・倒れている人の近くに置き、電源を入れる


AEDは数種類ありますが、どの機種も同じ手順で使えるように設計されています。
電源が入ると音声メッセージと点滅ランプで、あなたが実施すべきことを指示してくれますので、落ち着いてそれに従ってください。
(ふたを開けると電源が自動で入る機種もあります。)可能であれば、AEDの準備中も心肺蘇生を続けてください。
9電極パッドを胸に貼る


電極パッドの袋を開封し、電極パッドをシールからはがし、粘着面を倒れている人の胸にしっかりと貼り付けます。
(電極パッドに張り付ける位置が描かれていますので、その通りに張り付けます。)
電極パッドのケーブルをAED本体の差込口に差し込みます。(機種によってはすでに差し込まれているものもあります。) (注意)
- 電極パッドは、肌との間にすき間を作らないように、しっかりと貼り付けます。
- アクセサリーなどの上から貼らないようにしてください。
- 成人用と小児用の2種類の電極パッドが入っている場合や、AED本体に成人用モードと小児用モードの切り替えがある機種があります。
その場合、小学生以上には成人用の電極パッド(成人用モード)を使用し、未就学児には小児用の電極パッド(小児用モード)を使 用してください。
10電気ショックの必要性は、AEDが判断する

この時、「みなさん、離れて」と注意を促し、誰も傷病者に触れていないことを確認します。
「ショックは不要です。」等の音声メッセージが流れた場合は、ただちに胸骨圧迫を再開します。
11ショックボタンを押す


充電が完了すると、「ショックボタンを押してください」などの音声メッセージが流れ、ショックボタンが点灯し、連続音が出ます。
付近の人に「ショックを行います。離れてください。」と注意を促し、誰も傷病者に触れていないことを確認し、ショックボタンを押します。
12心肺蘇生の再開

心肺蘇生を再開して2分ほど経ったら、再びAEDが自動的に心電図の解析を行います。音声メッセージに従って傷病者から手を離し、周りの人も傷病者から離れます。
以後、心電図解析⇒電気ショック⇒心肺蘇生の再開の手順を、約2分間おきに繰り返します。
心肺蘇生のまとめ
倒れている人を発見 | 呼びかけて反応がなければ、近くの人に119番通報とAEDの搬送を依頼し、気道確保せずに呼吸の確認(胸と腹部の動きを見る) |
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心肺蘇生 | 普段どおりの呼吸がなければ、胸骨圧迫30回 |
胸骨圧迫が終わったら、気道確保と人工呼吸2回(その後は、胸骨圧迫30回と人工呼吸2回繰り返し行う) | |
AED到着 | AEDが到着したら、まず電源を入れ、電極パッドを胸に貼る 電気ショックの必要性は、AEDが判断する 電気ショックが必要と判断されたら、誰も傷病者に触れていないことを確認してからショックボタンを押す 以後は、AEDのメッセージに従います |
胸骨圧迫と人工呼吸のまとめ
圧迫位置 | 胸骨の下半分(目安は胸の真ん中) |
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圧迫方法 | 両手を重ねて(体型によっては片手) |
圧迫の深さ | 少なくとも5cm沈むほど(深さは体格に合わせる。目安は小児は胸の3分の1、小学校高学年ぐらいの体格なら5cm) |
テンポ | 少なくとも100回/分 |
吹き込み量 | 胸の上りが見える程度 |
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吹き込み時間 | 約1秒 |
回数 | 2回(胸が上がらなくても吹き込みは2回までとする) |
胸骨圧迫と人工呼吸の組み合わせは 30:2
お問合せ先
乙訓消防組合 消防本部 救急課 電話:953-6039